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■ 愛知演習林シンポジウム 『緑のダム研究の現状と将来展望』 ■

『緑のダム』シンポジウムに参加して」(その1)
堤勝彦 2004/2/25

 1月31日と2月1日の2日間、愛知県瀬戸市で「緑のダム研究の現状と将来展望」というシンポジウムが開催されました。主催は東京大学愛知演習林です。このシンポジウムは「緑のダム」に対する社会的な関心が高まるなか、住民からの要求、現場で市民や地方自治体がどのような問題を抱え、どのような取り組みが行われているのか。対して学者が研究レベルで「緑のダム」をどのように捉え、どのような研究を行っているのかという報告がされました。

 市民からは「緑のダム」検証に取り組み始めた球磨川水系緑のダム再生ネットワーク、そして吉野川可動堰建設問題から「緑のダム」の科学的検証を進める吉野川みんなの会が報告しました。地方自治体からはダム計画の根幹となる部分に切り込んだ長野県松本地方事務所。他に国交省土木研究所や森林総合研究所、そして大学研究者が報告しました。会場はこれに加え、地方自治体の議員や企業などバラエティーに富んだ多くの分野から200人以上もの人が参加しました。「緑のダム」への関心の高さをうかがわせます。

 東京大学愛知演習林はセトモノで有名な瀬戸市にあります。今から82年前の大正11年、当時は陶器用の土採取により「日本三大はげ山地帯」に挙げられるほどの荒廃地に設定されました。広さは1,292ヘクタール。わざわざこのような荒廃地を選んで演習林が設置されたのは「山に緑を回復する研究と技術の開発、学生のための実習が目的」とパンフレットにあります。植林による針葉樹と自然に自生した広葉樹の森が地域的に分けられて育っています。

 初日の基調講演で東京大学の鈴木雅一教授(森林水文学)はこんな事を言っています。
・日本の総森林面積は100年前からほとんど変化していない
・1950年代、60年代に伐採され植林された人工林は成長している
・森林が育つと川の水が減る
・森林は水をゆっくりと川へ流す

私は昨年、一昨年と吉野川流域の人工林で、表土が流され河原のように石ころが転がる放置人工林をたくさん見てきました。そういった人工林は枝打ちや間伐がされていないために、
昼間でも暗く写真1下草がまったくと言っていいほど生えていません写真2。みんなの会の姫野さんは可動堰建設問題から「緑のダム」研究に取り組む事になった経緯、そして昨年の夏の台風10号による大雨と暴風の影響で発生した徳島の人工林崩壊、水俣の人工林で発生した土石流災害の様子を、写真をまじえながら報告しました。1950年代からの拡大造林政策により吉野川流域の自然林は伐採され、森林全体のおよそ70%がスギやヒノキの人工林に変わりました。しかし、現在では輸入木材により林業経営が経済的に成り立たなくなり、放置人工林が増え、荒廃がどんどん進んでいます。森林荒廃とともに洪水や土砂災害は増えています。研究者や専門家はこの事実をどのように受けとめたのでしょうか。

 新聞報道によると全国35の都道府県が森林税の導入を検討しているそうです。何と全体の75%にあたる数字です。経済的に成り立たない林業経営が放置人工林を増加させ、森林の保水力低下や土石流災害が発生したため、これを食い止めるために森林の保全を目的とした手入れをする財源を確保しようというものだそうです。
 だとすれば、基調講演で話された「森林は成長している」という言葉とは裏腹に、健全でない森林が全国的に増えており、水環境が悪化している現実があると考えるのが普通です。残念ながら吉野川の最大受益地である我が徳島県では現時点で導入するという話は聞きません。

 吉野川流域の山林に暮らす人々から私が聞いた話は「間伐はすぐにでもしなければいけないが、赤字になるので出来ない」という事です。私はこの基調講演を聴いて、「ずいぶん現場の実情と違うんじゃないか」という印象を持ちました。

 さあ、これからどういう話になるのでしょうか。   続く・・・

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Last updated 2004/03/04
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